未だ嫁いでない故、其の辺の男共、此れを夜這わんとするが、固く辞していた。
とある時ある人が言い寄って来たのを辞すると彼は金銀財宝を車三両に山積みにし送ってきた。
父母、此れを見て、財宝に心奪われ、彼の婚姻を許しつ。
吉日を定めて、彼が家にやってきた。
寝所に入て、娘とセックスした。夜中に娘、大声で、「痛い、痛い」と三度程言う。父母、此の音を聞て、「処女ですからね最初は痛いものですよ」と言って寝た
夜明け後、娘が起きてこないので、母、大声で呼ぶが返答は無し。
怪むで部屋近く寄て見るに、娘の頭部と一本の指を残して、他の体は無し。
また、血の多く流れたり。父母、此れを見て、泣き悲む事限無し。
また、男が贈ってきた財宝を見れば、馬牛の骨になっていた。
財を積んでいた三の車を見れば、グミの木になっていた
「鬼が人に変じて来て殺したか、または神の怒りによる祟りであるか」と疑て、歎き悲む間、其の辺の近所の人、此れを聞き集り来て、此れを見て、怪しまずと云ふ事無し。
其の後、娘の為に仏事を修して、娘の頭を箱に入て、初七日に当る日、仏の御前に置て、斎会をぞ行う。
以上の話は人が財により目が眩み起こった事だ。
財宝に心を惹かれる事は不幸を呼ぶ。
父母、悔ひ悲びけるとなむ、語り伝へたるとや。
南蛮言葉より話さずまぐわえ
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